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まずしきひとびとのむれ

貧しき人々の群

宮本 百合子

「中央公論」1916(大正5)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,959 字 · 118 页

青空文庫

「そんだら行(え)げよ。おめえにいて貰わんとええとよ。フフフフフ」

「や! 鮭が落ちんぞ。馬鹿!」

「ははははは」

集っている者共は、下等な好奇心に動かされて、互に突き合ったり打ち合ったりして喚きながら、暫くの間大きくなったり、小さくなったりしていた。

けれども、だんだん人数も減って来ると、前よりもっといやな顔をした善馬鹿が、握った鮭を落しそうにしてよろけながら、道傍の樫の大木の蔭まで来ると、赤ん坊のようにドサンと仰向けに寝た。そして、大口を開(あ)いて、鼻をグーグー鳴らしながら寝込んでしまった。

犬がそろそろと首を伸して、彼の手に持たせたまま片端から鮭を食べ始めると、子供等は彼のした下等な身振りの真似をしたりしながら、しきりに彼を起しにかかったのである。

一人の子は「狐のしっぽ」で鼻の穴をくすぐった。

蹴ろうが怒鳴ろうが、ゆさりともしないので、図に乗った子供達は善馬鹿を裸体(はだか)にし始めた。彼等は掛声をかけながら、だんだん肌脱ぎにさせたとき、いつの間にかそこにおって、様子を見ていた若い者がいきなり、

「そげえなことーするでねえぞ。天道様あ罰(ばち)いお下しなさんぞ」