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まずしきひとびとのむれ
貧しき人々の群
宮本 百合子
「中央公論」1916(大正5)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,959 字 · 118 页
そして、いろいろ評議された末、終に故牧師が埋められているK村の貧民に、僅かずつでも「ほどこし」をしようということになった。
故人が、貧民救済には、随分心を用いていたのだけれども、多用だったり、基金が無かったりして、意のままにはならないで終ってしまったから、自分達がその遺志を継ぐのは当然のことであるというのであった。
婦人達は皆勢づいた。そして、早速刷物を作って、町中の少くとも誰さんといわれるほどの人へは、残らず配付して、お志の御寄附を勧誘したのである。
その珍しい印刷物を手にした者は、皆様々の思いに打たれた。或る者は喜び、或る者は身に及ばないことではあるが、どうかして仲間から脱けたくないものだという苦しさに迫られた。
町中はこの噂で一杯になり、町が始まってから初めてのことだといっても好いくらい、女の人の仕事の稀なこの土地では、天道様が地面から出たような騒ぎであった。
けれども、じきに種々な苦情が起って来て、関係者を非常に困らせた。
それは、こんな女が委員だとか何だとか、麗々しく名を出しているのに、一体私はどうしたのだ、というようなことから、誰彼の差別なく名を並べて置くよりは、会長とか副会長とかから、末は馳(はし)り使(つか)いまで明かな役名をつけて置かなければいけないということである。