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まずしきひとびとのむれ

貧しき人々の群

宮本 百合子

「中央公論」1916(大正5)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,959 字 · 118 页

青空文庫

村中は、もう出来るだけ穢くなって、それでいて私が今まで一度も見たことのないほど活気づいている。

けれども、見て歩くうちに、だんだん彼等の心がよめて来た。そして、人間もどこまで惨めな心になるものかと、恐ろしいような情ないような心持になってしまった。

私は、何だか自分の力ではどうしようもないことが、起って来たような気持になって、家へ帰った。

家の中は相変らず平和に、清潔に、昔ながらの家具が小ぢんまりと落着いている。

私は、折々縁側に立って向うの街道の砂塵の立つのを見ていた。町からこの村へ来る者は、一人一人ここから見えるのである。

けれども、昼近くなるまで、町の者らしい者は一人も通らなかった。

ところが、もう十一時頃になって、沢山の人力車(じんりき)が列になって暑そうに馳けて行った。中には、種々な色の着物が見える。町の婦人達の仕事は、これから始まろうとするのであった。

村の入口で婦人達は車を下りた。そして、会長夫人を取り巻いて、ガヤガヤ歩き出しの相談をしている周囲を、裸身(はだかみ)に赤ん坊を負ぶった子守だの女房共だのが、グルッととりかこんで、だんだん外側から押しつけ始めた。