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まずしきひとびとのむれ

貧しき人々の群

宮本 百合子

「中央公論」1916(大正5)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,959 字 · 118 页

青空文庫

貧乏な女共は、びっくりして町の「奥様方」を観た。

光る櫛の差さった髪、刺繍(ぬいとり)だらけの半襟、または指中に燦き渡っている赤や青や白の指環をながめた。指環をはめていない人はない。皆手に小さく美しい袋を下げている。まあ帯の立派だこと! どんな白粉ならああむらがなく付くのだろう? あら! あんな洋傘(こうもり)もあると見える!

女共は頭が痛くなるほど羨ましかった。同じ女に生れて、自分等のように死ぬまで泥まびれでいなけりゃあならない者があるかと思えば、こんなお化粧をして、金を撒いていられる人もある。

何て立派なんだろう!

けれども……。

女達が妙に思ったのは無理もない。町の奥さん方は、ほかは金ぴかぴかでいながら着物は皆メリンスばかりであった。

それは、「質素を旨とし衣服はメリンス以下なるべきこと」という条件があったので、賢明なる婦人達は、その箇条を正直に最も適当に守ったのであった。

やがて婦人共は歩き出した。

派手な色彩の洋傘が、塵(ほこり)だらけの田舎道に驚くべき行列を作った。

第一に止まったのは桶屋の所である。

後をゾロゾロついて来た者共は、先を争って間口一杯に立ち塞がったので、妙に暗く息のこもったようになった部屋の中には、股引一つの桶屋と、破けてボロボロになった「ちゃんちゃん」