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まずしきひとびとのむれ

貧しき人々の群

宮本 百合子

「中央公論」1916(大正5)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,959 字 · 118 页

青空文庫

「そうともよ、好え気になれんのも娑婆にいる間だけのこった、なあ新さん。死んだ後のこと、俺らが知るもんけ!

あとは野となれやま……となーれ。

ヤ、シッチョイサ!

か。

どうだ巧かっぺえ」

皆は破(わ)れるように喝采した。新さんは妙な笑い方をした。

「面白えなあ。踊りてえなあ。ちゃん!」

甚助の子が、よろけながら立ち上ったとき、向うから、これも微酔(ほろよい)の善馬鹿が来かかった。

これで、すっかり元のように賑やかになってしまった。

彼は皆に呼ばれて、また二三杯のまされた。

「おめえ俺らと仲よしだんなあ。善! 踊んねえか? 面白えぞ」

甚助の子は、善馬鹿の耳朶を引っぱりながら、床几(えんだい)の周囲(まわり)を引っぱり廻した。

「こりゃうめえ、さ、踊れ。また酒え飲ますぞ」

「踊れよ、相手が好えや。ハハハハハハ」

「そら踊った、踊った!」

単純な頭を、酒でめちゃめちゃにされた甚助の子は、気違いのようになっていた。

肌脱ぎになり、両手に草履を履くと、善馬鹿の体中を叩きながら、訳の分らないことを叫んで踊り出した。

「や! うめえぞッ!」

「そーらやれやれ。ええか? 唄うぞ!