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ひんみんくらぶ
貧民倶楽部
泉 鏡花
「北海道毎日新聞」1895(明治28)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,333 字 · 111 页
大方通魔に魅入られて、ふいと気が違ったのかも知れないよ、照子様には済まないけれども、ああ可哀そう。」
と熱き露、清き眼より溢るる処へ、後馳の伯爵悠々と参りたまい、「何じゃ騒しいな。ふ、ふ、あ、あ、それは結構。何さ、しかし心配には及ばぬよ。殺されたものは損、照子殿は豪い功じゃ、妖物を斬ったとあれば立派なものじゃ。けれどもな、少々は金が要るじゃ。」と頤にて死骸を指したまい、「これが親許は。」綾子答えて、「鮫ヶ橋に老婆一人、黒瀬縫とか承わりました。」「うむ、さようか。それに手当をしてやれ。老婆だとあればさぞ愚痴っぽく泣くじゃろの。」「御意にござります。」と時次が申す。
「それがちと面倒じゃ。可、可、これは駿河台の御隠居を煩わすとするじゃ。説法が旨いで、因果を含めるに可いわい。」「仏を御学び遊ばして御道徳抜群にいらせられますれば、至極よろしゅうござりましょう。」「お前これから駿河台へ行っての、次第を申して御老体御苦労じゃが、鮫ヶ橋まで御出向のあるように、なりたけ内証での、そこを旨く、可いか。」「はッ。」「何でも怨む者さえ無ければ物ごとは円く納る。検屍にはあのナンノをな、それから、ナニはナニして、ナンノを、ナンノを。