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ひんみんくらぶ

貧民倶楽部

泉 鏡花

「北海道毎日新聞」1895(明治28)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,333 字 · 111 页

青空文庫

」「何、何、我あ、今年はもう七十五になっての、耳が疎いに依って大きな声で謂わっしゃい。」「こりゃ大難だ。婆様あのの。」「あいあい。」「あののお前、黒瀬ぬいという婆様を知らねえかい。」「あい、知っておりやす。したがお前様は親類の人かね。」「ウンヤ、秀坊というその娘っ子のことでちと用があるんだ。」半ばは聞取得ず。「ま、待たっしゃれ今燈明を点ける。」と膝行歩きて、燧火か、附木か、探す様子。江戸児焦れ込み、「こう早く教えてくんねえ。御前様が待っていなさらあ。」

促げても頓着せず、何とか絶えず独言つつ鉄葉の洋燈に火屋無しの裸火、赤黒き光を放つと同時に開眸一見、三吉慄然として「娑婆じゃねえ。」

今まで我にものを謂いし老婆は活きたる骸骨なりき。ずたずたになれる筵の上に、襤褸切、藁屑、椀、皿、鉢、口無き土瓶、蓋無き鍋、足の無き膳、手の無き十能、一切の道具什物は皆塵塚の産物なるが、点々散乱してその怪異いうべからず。古物千歳を経て霊ありというものあるいはこれか。老婆の他にまた一人あり。味噌漉に襤褸を纏いて枕とし、横様に臥して動かざるは、あたかも死したる人のごとし。

老婆はそれを指して、「この死人がその黒瀬ぬいでござんやす。