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ひんみんくらぶ

貧民倶楽部

泉 鏡花

「北海道毎日新聞」1895(明治28)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,333 字 · 111 页

青空文庫

「盗人待て。……」と伯爵夫人は一方ならぬ侮辱を蒙りて、堪え堪えし腹立声。

「何を。」色をも変ぜず見返る婦人。

照子嬢も声鋭く、「それは売物です。」と遣込むれば、濶歩に引返し、「だから最初に聞いたじゃないか、価値が解れば払うのさ。」

憎さも憎しと伯爵夫人、「二円。」と恐しき懸を謂う。

婦人はちっとも驚かず、「それじゃ二十銭剰銭を下さい。」

「まだ何にも請取りません。」と貞子の方は真面目なり。

「先刻五円払いました。」

照子は聞くより怒気心頭を衝きて面を赤め、

「騙局です、失敬な。夫人巡査を呼びましょう。」と愛々しき眼に角立つれば、

「はい、引渡しましょう。秋や定。」と急込むにぞ、側に侍いける侍女二人、ばらばらと立懸くるを、遮って冷笑い、

「こうこう騒ぎなさんな。塵埃が煽つによ。お前様方は美くしい手で恐しい掴取をしなさるね。今のあの男は二円八十銭の買物をして、五円渡して去ったじゃないか、そこで私の買物が二円さ、可しかえ。合計四円と八十銭になるんだね。」「えー。」二人の呆るるを、それ見よと畳懸け、

「銅貨じゃ重いわ。二十銭銀貨で呉んな。」と空嘯きつつ小膝を拍ち、「おっと、まだ有る。