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あかいステッキ
赤いステッキ
壺井 栄
「中央公論」1940(昭和15)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,482 字 · 23 页
お母さんはもう子供たちへ探索の目を向けることがつらかった。
「さがしてきてあげら、克ちゃん」と、一人がかけだすと、あとの五人もそれにつづいて逃げるように走りだした。石を投げ、噛みつくと、よそから口説の多い克子の向こう見ずな振舞が、ただ持前の負けぬ性質からだけではなく、不具の子に与えられた武器なのだと思い、それで克子をとがめだてはできないのだぞと、大人の心の動き方だけで、むきになって、克子の敵と向かい合っているとき、克子は草履をかくされればはだしになって歌をうたっている。抱いて井戸端へ立たせると、冷たいともいわず指先を上にむけて踵で立っていた。そんなことを考えれば、お母さんの胸には新たな思いも湧くのであった。いつの日にか克子は自分が不具者であると知らされるであろうが、この子ならばむだな悲しみ方はしないであろう。草履がなければはだしで歩ける克子、そういう克子をこそ育てあげねばならないのだ。
「みんなが克だけをめくらいうてなぶる」
と、克子はくやしがっている。
「ほんまに、ほんまにこんなかわいい子を、どうしてそんなこというんじゃろにな」
お母さんは克子の頭を両手でかかえ、何度もさすりおろしながら、しだいになごやかな表情に変っていく克子の額にわが額をこすりつけていった。