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あかひげしんりょうたん
赤ひげ診療譚
山本 周五郎
07 おくめ殺し
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,548 字 · 47 页
男の一人は与平で、彼が他の三人をひき合わせた。左官の小助、魚屋の長次、車力の正吉。小助は与平と同じ年ごろであり、長次と正吉は三十歳前後にみえた。
「いそがしいところを済みません」と寝たままで角三が云った、「じつは高田屋のことなんですが、十九年まえなにがあったか、ということがわかったんです」
「わかった」と登は眼をほそめた。
「多助じいさんが来まして、ああ、ちょうど貴方がいたときでしたね」と角三は云った、「舌がもつれるうえにのぼせあがっていて、云うことがよくわからなかった、貴方がお帰りになったあと、少しおちついてからよく聞いてみると、十九年まえの事で書いた物がある筈だって云うんです」
初めはしきりに「仏壇」ということを繰り返していたが、やがて、高田屋との約束の件を書いた物がある、それには自分のほかに四人の総代の名と拇印が押してあり、亡くなった加吉が預かっていた、と話しだした。
――おれは初耳だぜ。
角三は父からなにも聞いていなかった。そうかもしれない、と多助が云った。おまえは奉公ちゅうで、加吉さんの死に目に会えなかった。おまえさんが駆けつけて来るまえに、加吉さんがそのことをおれに話したんだ。