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あかさかじょうのからくり
赤坂城の謀略
国枝 史郎
「日の出」1935(昭和10)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,661 字 · 16 页
決死の程が想像されよう。
さて、然うドッと鬨をあげた。
然るに答える者はなく、駈け出して来る兵もなく、楠氏の陣営には、焚きすてられた篝が、余燼を上げているばかりであった。
「正成一流のたばかりでもあろうぞ。油断して裏掻かるるな」
と、公綱は馬上大音に叫び、更に天王寺の東西の口より、三度までも駈入り駈入ったが、敵の姿は一人も見られなかった。
夜がまったく明け放れた。
事実敵影はないのであった。
多少の疑惑はあったものの、戦わざるに勝った心地がして、公綱としては歓喜類なく、正成の陣営のその後へ、自身直ちに陣を敷き、やがて京都へ早馬を立て勝利の旨を南六波羅へ申しやった。
しかるに五六日経った頃から、奇怪なことが夜々に起った。
天王寺を遠く囲繞して、秋篠の郷や外山の里や、生駒の嶽や志城津の浜や、住吉や難波の浦々に――即ち大和、河内、紀伊の、山々谷々浦々に、篝や松明がおびただしく焚かれ、今にも数千数万の軍勢が、寄せ来るかとばかり見えることであった。
「一旦陣は引いたが正成め、新手の大軍を猟り催し、押し寄せ来る手段と見える。誠の戦一度もせず、残念に思っていたところ、押し寄せ来るこそ却って幸い、迎え撃って雌雄を決しようぞ。