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あかさかじょうのからくり
赤坂城の謀略
国枝 史郎
「日の出」1935(昭和10)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,661 字 · 16 页
此時東魚来テ四海ヲ呑ム。日西天ニ没スルコト三百七十余箇日。西鳥来テ東魚ヲ食ウ。其後海内一ニ帰スルコト三年。猴ノ如キ者天下ヲ掠ムルコト三十余年。大兇変ジテ一元ニ帰ス」
それはこういう文字であった。
正成は沈思した。
思いあたることが数々あった。
(後醍醐の帝こそは神武の帝より数えて、九十五代にあたらせ給う。天下一度乱レテ主安カラズ。これは現代の事なのであろう。東魚来テ四海ヲ呑ム。これは北條の、一族の悪逆を指しているのであろう。西鳥来テ東魚ヲ食ウ。これは何者か関東を滅す。という予言に相違ない。日西天ニ没スとあるは、帝隠岐島へ御遷幸ましまされた、この一事を指しておられるのであろう。三百七十余日とあるからには、明年のその頃に都へ御還幸、御位に復されるやも計られぬ。……しかしそれにしてもその次に書かれた、猴ノ如キモノ天下ヲ掠ムとは、一体どういう意味なのであろう?)
一抹の不安が正成の心に起った。
これは勿論足利尊氏によって、天下を奪われることを予言したところの、その一文であるのであったが、如何に聡明の正成にも、そこまでは思い及ばなかったのである。
(どうあろうと我に於て関わりはない)