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あかさかじょうのからくり

赤坂城の謀略

国枝 史郎

「日の出」1935(昭和10)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,661 字 · 16 页

青空文庫

……正成が為んよう見て居るがよいぞ」

暁近くなった時、正成の本陣をはじめとし、和田正遠、湯浅定仏、その他楠家一党の陣は、ひそかに粛々と伍をととのえ天王寺から引きあげた。

*

一方宇都宮治部大輔公綱は、東の空の白むと見るや、七百余騎を引率し、天王寺さして驀地に押し寄せ、古宇都の民家へ火をかけて、鬨の声をドッとあげた。

京都あまりに無勢とあって、両六波羅探題北條時益、同じく北條仲時によって、わざわざ関東から呼びよせられ、京都守護をまかせられた、武功名誉の公綱であった。隅田、高橋の両武将が、もろくも正成のために渡辺の橋で破られ、関東の武威を失墜するや「大軍すでに利を失いました後、小勢を以て向いますること、如何あらんかとは存じまするが、関東を罷り出でまする際、このようなお大事に巡り合い、命を軽ういたすを以て、念願といたしおりましたる私、駆け向いまするでござりましょう。今の場合を観じまするに、戦いの勝敗そのものを、云為いたす時にてはござりませぬ。何はあれ一人にても駈け向い、落ちました関東の武威を揚げますこと、肝要のことかと存ぜられまする」と、こう言上して向って来た公綱であった。