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せきようかんじけんのしんそう
赤耀館事件の真相
海野 十三
「新青年」博文館、1929(昭和4)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,797 字 · 60 页
「対談中、だれかこの部屋に入って来たものはありませんか」
「執事の勝見が案内して来たのと、姪の百合子がお茶などを運んで来たきりでした」
「貴方が中座されたようなことはありませんか。又は画伯のことでもいいのですが」
「私は中座しなかったように思います。画伯も中座しなかったろうと思いますが、よく気をつけていませんでした」
「よく気をつけていなかったとは、どういう意味ですか」
「一寸しらべものをやっていたので、注意力が及ばなかったかも知れないというのです」
「対談中、お仕事をなさっていたのですナ」
「まア、そうです」
「お話はどんな種類のことですか」
「そ、それは、まア早く言えば僕等の新婚生活をひやかしていたのです」
「ハア、なるほどそうですか。奥様はどちらにいらっしゃいますか」
「一寸おひるから友達のところへ出掛けましたがネ、もう帰って来る頃でしょう」
「いや、どうもお手数をかけました」
尾形警部は、執事と百合子とを呼び出して兄と笛吹川画伯対談の様子を一寸訊問すると帰って行きました。彼等はつまらぬ係り合になってはと思ったものか申し合わせたように兄と笛吹川画伯との争論を耳にしたことは言いませんでした。