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せきようかんじけんのしんそう

赤耀館事件の真相

海野 十三

「新青年」博文館、1929(昭和4)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,797 字 · 60 页

青空文庫

皆はほっとした顔付で静かに煙草をくゆらしたり、貼り出された得点表の前に雑談を交えたりしていました。いよいよ最後の第三回戦は九時五分過ぎから、始められるのです。手伝いに来ていたボーイが、冷たいレモナーデのコップを配りました。それは興奮を癒すための、まことに爽やかな飲料でもあり、蒸し暑くなって来た気温を和げるための清涼剤でもありました。

「やあ、とうとう降って来た。凄い大粒だ」

窓近くにいた誰かが喚くのをきっかけに、窓外の闇をすかして、銀幕を張ったような大雨が沛然と降り下りました。硝子戸をバタバタと締める音がやかましく聴えます。その騒ぎの中に時計は九時を五分過ぎ、十分過ぎ、もうかれこれ十五分を廻りましたが、一向試合開始のベルが鳴る様子がありません。

「どうしたんです。主人公は?」賀茂子爵が苛々した風で、奇声を張り上げました。

「どう遊ばしたのでしょうか。私も先程から不思議に思っていたのでございますが……。少々御待ち遊ばして。お室を探して参りましょう」

執事の勝見が不安の面持で、急いで探しに行きました。しかし兄の姿は階上の私室にもなく、廊下にも発見することが出来ませんでした。