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せきようかんじけんのしんそう

赤耀館事件の真相

海野 十三

「新青年」博文館、1929(昭和4)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,797 字 · 60 页

青空文庫

階段の下で、これも兄を探しているらしい百合子と出会いましたが、彼女は、

「勝見さん、兄さんは屹度実験室よ、行ってみて下さい」

「承知しました。――奥様は?」

「姉さんはあちらよ。姉さんがそう言ったわ、銚子無線の時報を聞きに行ったんでしょうって……」

勝見は本館を離れて屋外の闇に走り出ました。雨は今の大降りをケロリと忘れたように小やみになっていましたが、赤耀館の真上には、墨を流したような黒雲が渦を捲きつつ垂れ下っていました。

勝見が気でも変になったような大声を挙げ、競技会のある大広間に飛びこんで来たのは、それからものの五分と経たないうちでした。

「主人が実験室に卒倒して居ります。どなたか、手をお貸し下さい。早く、早く……」

こう叫ぶと彼は身体を飜して駆け出しました。一同は呀ッと声を合せて叫びましたが、勝見の後を追って戸外の闇の中に犇きながら、実験室のある方向へ走って行きました。雨はもうすっかり上っていたようです。

実験室の建物は、四角な身体を、黒々と闇のなかに浮ばせていました。正面に長方形の扉が開きっぱなしとなり、黄色い室内の照明が、戸外にまで流れていました。