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ちょうかきんむ
超過勤務
山本 周五郎
「文藝朝日」朝日新聞社、1962(昭和37)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,619 字 · 31 页
ことが癖になると、躯までいつかそうなってしまうぞ、さあ、これを持っといで」
少女は奇声をあげ、コンパクトを持ったなり片手で紙幣をさっと取った。
「もういい、たくさんだ」少女がまた抱きつこうとするのを、彼は手を振ってこばんだ、「早くいかないと彼に怒られるぞ」
「おじさんてやっぱりたのもしいな」少女は紙幣といっしょにコンパクトをしまった、「これで今夜のデイトも恰好つくわ」
「ちょっときくけれどね、いつもそんなにデイトばかりしていて飽きないのかい」彼はげせないというふうに云った、「僕なんかは一週間に一度がせいぜいだったけれど、それでさえ二時間もいっしょにいると、もう話すこともなくなって困ったもんだがね」
「話すばっかりでしょ、ふ、あちしっちなんか時間が足りなくって困るくらいよ」
「ジャズ喫茶か」
「ペッティング」と少女は顎を突き出す、「あちしなんか躯がしびれちゃって頭がからっぽになっちゃって、時間の経つのなんかてんでわかりゃしないわ」
「この不良少女」彼はにらみつけたが、好奇心のために身を乗りだした、「きみはただ人の口まねをしているだけさ、頭も躯もしびれちまうなんて、そいつも週刊小説の受け売りなんだろう」