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ちょうかきんむ

超過勤務

山本 周五郎

「文藝朝日」朝日新聞社、1962(昭和37)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,619 字 · 31 页

青空文庫

少女は肩をすくめて笑い、おとなぶった調子で云った、「人のことは知らないけどあちしはそうなの、あちしはね、少しね、露出症なんですってよっ、チャオ」

少女は身をひるがえし、片手を振りながら走り出て、外からドアを乱暴に閉めた。――彼はまっすぐに、前方の壁をみつめ、三十秒ほど身動きもしなかった。いま聞いた少女のささやきが、彼には強烈すぎたらしい。頭の中で多彩なイメージが展開し、それが彼の思考力を麻痺させているようにみえる。――しかしまもなく、いちばん初めに鳴った電話が、ベルを鳴らせて彼を呼びさました。

「はあ」彼はその受話器を取った、「こちらはにほん屋百貨店の輸入品整理部でございます、私は整理部副部長代理の、はあ、――いえ冗談などは申しません、こちらはにほん屋百貨店の輸入、はあ、いいえ違います、ここはバー・ボンポンクラブではございませんし、まりっぺなどという女給さんもおりません、もういちど申し上げますがこちらはにほん屋、――ええ、切っちまやがった」

彼は受話器を戻した。

「人をばかにしたやつだ、なんだと思ってるんだ」彼は伝票を繰り、記帳にかかる、「――ボンポンクラブかい、おっさん、まりっぺを出してくれよ、だってやがる、ごまかすなよおっさん、こっちは冗談じゃねえんだから、だって、――そして間違ってすまなかっ