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おどるいっすんぼうし
踊る一寸法師
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1926(大正15)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,734 字 · 16 页
十一二歳の子供の胴体に、三十男の顔をくっつけた様な怪物だ。頭の鉢が福助の様に開いて、らっきょう型の顔には、蜘蛛が足を拡げた様な、深い皺と、キョロリとした大きな眼と、丸い鼻と、笑う時には耳までさけるのではないかと思われる大きな口と、そして、鼻の下の薄黒い無精髯とが、不調和についていた。青白い顔に脣だけが妙に真赤だった。
「緑さん、私のお酌なら、受けて呉れるわね」
美人玉乗りのお花が、酒の為に赤くほてった顔に、微笑を浮べて、さも自信ありげに口を入れた。村中の評判になった、このお花の名前は、私も覚えていた。
一寸法師は、お花に正面から見つめられて、一寸たじろいだ。彼の顔には一刹那不思議な表情が現れた。あれが怪物の羞恥であろうか。併し、暫くもじもじしたあとで、彼はやっぱり同じことを繰返した。
「おらあ、酒は駄目なんだよ」
顔は相変わらず笑っていたが、それは咽喉にひっかかった様な、低い声だった。
「そう云わないで、まあ一杯やんなよ」
紫繻子の猿股は、ノコノコと歩いて行って、一寸法師の手を取った。
「さあ、こうしたら、もう逃がしっこないぞ」
彼は、そう云って、グングンその手を引っぱった。