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おどるちへいせん

踊る地平線(上)

谷 譲次

谷譲次『踊る地平線(上)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:踊る地平線、踊る地平線、踊る地平線、踊る地平線、踊る地平線、踊る地平線。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 168,926 字 · 332 页

青空文庫

「明治四十二年十月二十六日午前八時、元勲伊藤公の坐乗せる特別列車は、長春より一路哈爾賓をさして急ぎつつあった。」

食堂車内の景。

伊藤公が、金の飾りのついた洋杖をかたわらに、何か書いた紙片を満鉄総裁中村是公氏、宮内大臣秘書官森泰二郎氏に示している。漢詩人森槐南が微吟する。

十月二十五日発奉天赴長春汽車中作

万里平原南満洲  風光潤遠一天秋

当年戦跡留余憤  更使行人牽暗愁

「日露の親和がこの汽車中にはじまり、汽車の前進するがごとくますます進展せんことを望む。」公はこう言って露西亜側の接待役を見まわしながら、しきりにつづける。「余は露西亜人を愛す。」

この「日露の親和がうんぬん」のことばは、公の死後、非常な好意をもって露人のあいだに喧伝された有名な言辞だ。

ふたたびタイトル。

「そうして午前九時――。」

と、これから暗殺の場面へ移るのだが、まあ止そう。

それよりも同車の満鉄のG氏が、私の肘を掴まえて大声に話している。

『列氏零下五度、こまかい雪が降っていましてね、猛烈に寒い朝でしたよ。ピストルの音ですか。いいえ、日本人の一般出迎者はずっと左の端のほうにいたので、何も聞えませんでした。