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のうそん
農村
宮本 百合子
「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页
(一)
冬枯の恐ろしく長い東北の小村は、四国あたりの其れにくらべると幾層倍か、貧しい哀れなものだと云う事は其の気候の事を思ってもじき分る事であるが、此の二年ほど、それどころかもっと長い間うるさくつきまとうて居る不作と、それにともなった身を切る様な不景気が此等みじめな村々を今一層はげしい生活難に陥れた。
企業的な性質に富んで居た此家の先代が後半世を、非常に熱心に尽して居た極く小さな農村がこの東北の、かなり位置の好い処にある。
かなり高くて姿の美くしい山々――三春富士、安達太良山などに四方をかこまれて、三春だの、島だのと云う村々と隣り合い只一つこの附近の町へ通じる里道は此村のはずれ近く、長々と、白いとりとめのない姿を夏は暑くるしく、冬はひやびやと横わって居る。
町のステーションから、軒の低い町筋をすぎて、両方が田畑になってからの道は小半里、つきあたりに、有るかなしの、あまり見だてもない村役場は建って居る。和洋折衷の三階建で、役場と云うよりは「三階」と云う方が分りやすい。
この「三階」につく前少しの処に三つ並んで大池がある。並んで居る順に一番池二番池と呼ばれ、三番池は近頃まで三つの中で、一番美くしい、清げな池であった。