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のうそん

農村

宮本 百合子

「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页

青空文庫

私は微笑する事も出来ない様に婆さんの顔を見た。

「礼儀も何も、知んねえからなっし

と取りなし顔に云いながら、立ちあがった。家の中の事に気を配りながら出るあとについて私も一緒に往還の方へ出ると、そこから杉並木の様な処を透して真直に見えて居る祖母の家へ足を向けながら、婆さんに、

「晩にでも遊びにお出。

と云いすてて只った一人足元を見ながら、沈んだ、重い気持で、静かに歩いて居ると小石がひどい勢で飛んで来て、私のすぐ足元で白いほこりをあげ、わきの叢にころげ込んで仕舞った。

私は本能的にすばやく身をよけてすぐ後を振向くとまだ二三間ほかはなれて居ない甚助の家の入口の家中の子供が皆重なりあって此方をのぞき、私に怒叱った一番大きな子は、次の石を拾おうとして腰をかがめて往還に立って居た。

私は、鋭い勢で飛んで来た小石が、袷の着物を通して体にあたる痛さや、素足から血のにじんで居る様子を男の子の態度を見た瞬間に想うともなく想った。

男の子が投げる事をやめる様にわきにある杭の木を小楯に取って、じいっとその方を見つめて居た。

体は静かに、眼は静かに、子供の上にそそがれてあるけれ共、今までに経験したことのない不安な気持は、私の頭中かけ廻って、あの小石が男の子の手をはなれるやいなや身をよける用意さえして居た。