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のうそん
農村
宮本 百合子
「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页
やさしく仕て居ればつけ上り、きびしくすればろくな事を仕ず、小作人なんかはしみじみ使いたくないものだと云う。菊太の女房はこの上なしのだらしなしやで、針もろくに持てず、甲斐性のない女だと女中まで、くさいものが前に有る様な顔を仕て話してきかせる。
「菊太爺さんもずるい爺様ですない。
いつもいつも、どうにかして無理を通して行く。御隠居様も今度は、どうしても許してやんなけりゃあ、いいですっぺ。
女中がこんな事を云っても、
「ああほんとうにそうだよ。
と云ったぎりその日一日祖母は、菊太の声と顔付とを眼先に浮べていやな思をするのである。
夜、湯に入りに来た構内の家を貸りて居る小学の校長をつかまえてまで今日の菊太の事を話した。
「どうもなかなかうまくは行かんもんですてね。
と云いは云ったが、菊太をけなすでも祖母に味方するでもなく気のない顔をして、飯坂の力餅をもじゃもじゃの髯の中へ投げ込んで、やがて「お寝み」と云って帰って仕舞った。
「ほんとうに小作男なんか使うのが間違いだ。ああ、ああ、けっぱいけっぱい。
床に入ってまで祖母はつぶやいて居た。よっぽどいやだと見える、気の毒な。