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のうそん
農村
宮本 百合子
「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页
一瞬の間も止まる事なく、上品に、優美に雲の群は微風に運ばれて、無窮の変化に身をまかせるのである。けれ共、紅の日輪が全く山の影に、姿をかくした時、川面から、夕もやは立ちのぼって、うす紫の色に四辺をとざす間もなく、真黒に浮出す連山のはざまから黄金の月輪は団々と差しのぼるのである。この時、無窮と見えた雲の運動は止まって、踏むさえ惜しい黄金の土地の上を、銀色の川が横ぎって、池の菱の花は、静かに、その瞼を閉ざすのである。
池の最も美わしい時、この池の尊さの染々と身にしみる時、それは只、真夏の夕べの、景色にばかり、池の真の価値は表われるのである。
此の村に置くには、あまりに美くしい池である。
山々の峰が白んで、それが次第に下へ下へと流れて来る毎に冬は近づくのである。
寒い――只寒いばかりの此の村の冬は只池にはる氷に若い者がなぐさめられるばかりである。
けれ共、三月四月と、春の早い都に花が咲く頃になると、山々は雪解の又変った美くしさを表わす。
快く晴れ渡った日、四方を取り巻いた山々の姿を見た時、誰でもその特長ある、目覚しさを讚美しないものはないのである。
雪の皆流れ落ちた処、まだ少し残った処、少しも消えない処、等によって皆異った色彩を持って居る。