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のうそん
農村
宮本 百合子
「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页
明るい中でみつめるものの総ては土でも木でも色々な日用品でも皆、自然に微笑が湧きのぼる様な柔い気持になる。けれ共夜の暗い中で物を見つめて居る時の恐ろしい事と云ったら、もう躰がすくんでしまう様な、顔を掩わずには居られない様になる。私はじいっと眼を据えて白い粉雪の飛びかかる四角い処を見て居るうちに段々その四角がひろがって行き、飛び散る白いものも多くなり、それにつれて戸の鳴る音さえ、ガンガーン、ガンガーンと次第に調子をたかめて行って、はてしもなく高く騒々しくなって行く音は、家中のありとあらゆる戸――袋戸棚の戸でも、戸棚でも、ましては枕元の屏風からさえ響いて来る様に想えた。
祖母の寝息さえ私の耳には届かない様になった。こんな事は勿論、私の妄想にすぎないと知りつつも、此上ない恐れに心を奪われて、いきなり枕へ頭を下すやいなや、夜着を深くかぶって、世界中たった一人の身になりでもした様な、たよりない気持になって、静かな眠りに入ろうとした。東京に居たら、こんな時、私は母の床の中へかくまってもらう。どんなに恐ろしくても、安心な気持になって母の手だの袂だのを握って気のしずまるまで置かしてもらう。