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のうそん
農村
宮本 百合子
「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页
一段話すと、祖母は梅の汁が自然に発酵した酒を進めた。私も一口なめて見たけれ共、舌の先がやけそうにヒリッとした。随分つよいらしかった。
校長は小さい猪口に三四杯飲んですっかり機嫌になり、自分等が若かった時、寄宿舎で夜中に食物をとりに行って小使だと思って舎監にソーット醤油を呉れと云って、それなり懐に一杯薯を抱いてつかまった事を、顔中の和毛をそよがせながら話した。そして炬燵布団に、髯もじゃの顔を押しつけて居眠りを始めた。祖母は笑いながらゆり起した時、見事な髯に白く「よだれ」のしずくがたった一つつつましげに輝いて居た。その「よだれ」のしずくはすっかり私の気持をやわらげて仕舞った。
翌日とその翌日とかかってすっかり雪解はすんで仕舞った。正月も迫って来た。けれ共、新、旧と二つの暦をつかって居る此村では新と旧と二度正月があるので、両方ともが割合にざっとすまされるのである。別にこれぞと云うほどの事も、この村ではして居ないとは云うものの、荷馬の背に新らしい下駄や一寸した家具がつんであるのも、やっぱり、あらそわれない暮らしい気持がただよって居る。ほんとうに、暮の気持がただよって居ると云う位のもので、あの一番せわしない、掛取りや、来年の準備に必要なものを景気をつけて売って居る商人やの姿が見えないから、いかにもしずかに自然に年