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のうそん
農村
宮本 百合子
「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页
祖母の顔を見るとすぐ、
「御隠居様、『おともさん』は……
と一層はげしく笑いこけながら、呉服屋からうけ取った金を小口から買物にはらったのだけれ共、一度代をはらうと、黄色い財布からチャラチャラと一つあまさず出して、すっかり勘定をしてからでなければ仕舞わない。幾度でも幾度でも繰返して、私共をやたらに待たせたとその銭を勘定する手つきまでして見せた。祖母は、
「あのお婆さんは、今夜きっとその財布をお臍にあてて寝るんだろうよ。あした目が覚めて見るとお札がむれて、かびだらけ。
等と云ったので、買って来たものを見せもしないで、はめをはずして笑って仕舞った。その時から女中はあの人の事を「お臍のお札」と云う名にして居た。けれ共それは、家中三人ほか知る事ではなかった。
二十六日の日に東京から、菓子と果物と「鳥そぼろ」がついて、同じ日に十二月分の国民文庫が届いた。
夕方、源平団子と云う菓子屋で餅をつかせて呉れと、こぼれそうな腹をした主婦が手帳と鉛筆を持って来た。家で食べる分は少しでも、食べさせる分が沢山いるので、納屋から二斗もちごめを計ってやって居た。此処いらの家では大抵自分の家でつくので、中学の教師の家だの何かでそう沢山頼まれもしないのだそうだ。