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こんどういさみとかがく

近藤勇と科学

直木 三十五

「文藝春秋増刊・オール讀物号」1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,465 字 · 28 页

青空文庫

金千代は、枚方で、新撰組の舟に、うまく乗れたし、城中から逃げる時にも、将軍が、天満橋から、茅舟で、天保山へ落ちたとすぐ聞いて、馬を飛ばしたが、間に合って、この舟に乗る事が出来た。同じように、馬でくると云っていた友人は遅れたらしいが

(彼奴は、紀州へ落ちただろう、然し、紀州だって、敵か味方か、判りはしない。彦根だって、藤堂だって、敵になったのだから――何んて、俺は、運のいい男だろう)

と、思うと

(何とかなるだろう)

と、自信がもてた。

「大阪城の御金蔵には、三千両しか無かったそうだし、江戸は君――あの通りだろう」

江戸では、小栗上野介が、軍用金の調達に奔走したが、フランスから借入れる外、方法がつかなかった、そして二人の貰った軍用金とて、少額なものであった。

「人気は悪いし――これで、負け戦になったら。今までさえ食え無いのが、何うなるだろう」

「そんな事を心配していたって――」

金千代は、そう云ったが、江戸へ入ると、幸運が、逃げてしまいそうにも思えた。旗本の相当の人で、蚊帳の無い人があった。鎧をもっている人は稀だった。百石百両という相場で、旗本の株を町人に譲って、隠居する人が、多かった。