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たいほしゅぎしゃ
退歩主義者
「月刊読売 夏期臨時増刊号」1949(昭和24)年7月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,703 字 · 20 页
そんなことは、もう、問題ではない。
彼は柄にもなくヨシミだのホーバイだのといったことに気がついてキマリの悪い思いをした。義理人情はつまらぬものだ。ドイツもコイツも見上げたサムライばかりである。人生はそういうものだ、と、彼は自分のウカツさを苦笑した。
さて、オレもサムライにならなきゃいけない。サムライとは何ぞや。椎名町帝銀犯人氏などがアッパレなサムライであろう。彼は路上に煙草の吸いがらを見つけて拾った。ライター屋のライターをちょッと拝借して火をつける。相済まん。許せよ。ライター屋の売子はちょッと可愛い娘である。ビックリして目の玉を大きくしている。ちょッとカラカイたくなって、ライターを、ポケットへ入れる。アッと叫びそうになる。
「ヘッヘッヘ。うそだい」
ライターを置いてニヤリとウインク。いきなり、コツンとなぐられた。
「おい、よせよ。冗談じゃないか」
「なめたマネしやがると、たゞはおかねえぞ」
相手は二人。ライター屋の隣の店の店員らしい。ライター屋の娘に威勢の良いところを見せたいのかも知れない。
「ヘッヘッヘ」
馬吉は無抵抗主義である。退歩主義と共通のもので、進取の気象などゝいうハデなものがなくなれば、誰しもそうなる文明の極致なのである。