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とじょうのはんにん

途上の犯人

浜尾 四郎

「犯罪科学」1930(昭和5)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,477 字 · 38 页

青空文庫

『その後御結婚被遊御幸福に御暮しの由』という第一冒頭の文句からして、気に入りませんでした。私の気もちにして見れば、私の妻は私のもので誰からも指一つさされたくないのです。私ら夫婦の間に、他の男から手紙が妻に来るなどという事は考えられなかったのです。私は、たしかに嫉妬深い男でしょう。たとえなき不愉快な数日の後、ある夜私は妻を責めて責めて責めぬいたのです。そうして水原との間について訊ねました。その時、妻はとうとう恐ろしい告白をしてしまいました。その時から私は凡ての幸福を失ってしまったのです。

あなたは検事をして居られたから、犯人がその犯罪をどんな風に自白するか、殊に女の犯罪者がどんなにその罪を告白するか、そのいろいろな有様を知って居らるるでしょう。その夜の私の妻の告白は驚くべきものではありましたが、いざ告白という所まで決心した敏子は、実に冷静に過去の事実を述べはじめたのです。

この告白は、或る事実を肯定したのです。彼女と水原とはかつて恋人であったというのです。いや、それ以上だったのです。よもやよもやと思っていた事が事実だったので、私は一時まっくらやみに突きこまれたようにもがきくるしみました。