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うんめいろんしゃ

運命論者

国木田 独歩

「山比古 第十號」1903(明治36)年3月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,357 字 · 34 页

青空文庫

』

『そういう訳では御座いませんが、私には昔から如何いう者か此疑があるので、始終胸を痛めて居るので御座ます、知らして益のない秘密だから父上も黙ってお居でになるのでしょうけれど、私は是非それが知りたいので御座います。』と僕は静に、決然と言い放ちました。

父は暫時く腕組をして考えて居ましたが、徐ろに顔を上げて、

『お前が疑がって居ることも私は知って居たのじゃ。私の方から言うた方がと思ったことも此頃ある。それで最早お前から聞れて見ると猶お言うて了うが可えから言うことに仕よう。』とそれから父は長々と物語りました。

けれども父の知らして呉れた事実はこれだけなのです。周防山口の地方裁判所に父が奉職して居た時分、馬場金之助という碁客が居て、父と非常に懇親を結び、常に兄弟の如く往来して居たそうです。その馬場という人物は一種非凡な処があって、碁以外に父は其人物を尊敬して居たということです。その一子が則ち僕であったのです。

父は其頃三十八、母は三十四で最早子は出来ないものと諦らめて居ると、馬場が病で没し、其妻も間もなく夫の後を襲て此世を去り、残ったのは二歳になる男の子、これ幸と父が引取って自分の児とし養ったので、父からいうと半分は孤児を救う義侠でしたろう。