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うんめいろんしゃ

運命論者

国木田 独歩

「山比古 第十號」1903(明治36)年3月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,357 字 · 34 页

青空文庫

『如何しました、如何しました』と叫けんだ僕の声を聞いて母は僅に座り直し、

『お前だったか、私は、私は……』と胸を撫すって居ましたが、其間も不思議そうに僕の顔を見て居たのです。僕は驚ろいて、

『母上如何なさいました。』と聞くと、

『お前が出抜に入って来たので、私は誰かと思った。おゝ喫驚した。』と直ぐ床を敷して休んで了いました。

此事の有った後は母の神経に益々異常を起し、不動明王を拝むばかりでなく、僕などは名も知らぬ神符を幾枚となく何処からか貰って来て、自分の居間の所々に貼つけたものです。そして更に妙なのは、これまで自分だけで勝手に信じて居たのが、僕を見て驚ろいた後は、僕に向っても不動を信じろというので、僕が何故信じなければならぬかと聞くと、

『たゞ黙って信じてお呉れ。それでないと私が心細い。』

『母上の気が安まるのなら信仰も仕ましょうが、それなら私よりもお里の方が可いでしょう。』

『お里では不可せん。彼には関係のないことだから。』

『それでは私には関係があるのですか。』

『まアそんなことを言わないで信仰してお呉れ、後生だから。』という母の言葉を里子も傍で聞て居ましたが、呆れて、