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うんめいろんしゃ

運命論者

国木田 独歩

「山比古 第十號」1903(明治36)年3月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,357 字 · 34 页

青空文庫

ところが所天が死くなってからというものは、其男の怨霊が如何かすると現われて、可怖い顔をして私を睨み、今にも私を取殺そうとするのです。それで私が不動様を一心に念ずると其怨霊がだん/\消て無なります。それにね、』と、母は一増声を潜め『この頃は其怨霊が信造に取ついたらしいよ。』

『まア嫌な!』里子は眉を顰めました。

『だってね、如何かすると信造の顔が私には怨霊そっくりに見えるのよ。』

それで僕に不動様を信じろと勧めるのです。けれども僕にはそんな真似は出来ないから、里子と共に色々と怨霊などいうものの有るべきでないことを説いたけれど無益でした。母は堅く信じて疑がわないので、僕等も持余し、此の鎌倉へでも来て居て精神を静めたらと、無理に勧めて遂に此処の別荘に入たのは今年の五月のことです。」

六

高橋信造は此処まで話して来て忽ち頭をあげ、西に傾く日影を愁然と見送って苦悩に堪えぬ様であったが、手早く杯をあげて一杯飲み干し、

「この先を詳しく話す勇気は僕にありません。事実を露骨に手短に話しますから、其以上は貴様の推察を願うだけです。

高橋梅、則ち僕の養母は僕の真実の母、生の母であったのです。