轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
すぎたはるのきおく
過ぎた春の記憶
小川 未明
「朱欒」1912(明治45)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,536 字 · 11 页
「覚えている。」
と、正一は心の裡で言った。
星の光りは、秋の冷たい空気の中に染んで、鼠色の衣物を着た、坊さんの眼は水晶のように光って見えた。
「わしは、お前を見ようと思って来た。」
と、その坊さんは言った。正一は母の言葉を思い出していっしょに行ってはいけないと思った。帰る時、坊さんは、正一を家の近くまで送って来てくれた。
正一は、病気にかかって床についていた。今、夢から醒された。眼を開けると、母親や、親類の人々が心配そうな顔付をして自分の顔を見ながら枕許に坐っていた。
――春の晩方、桜の咲いている寺へお詣りに来た。沢山の人がお詣りに来ている。中には、もうこの世を去った人で、見覚えのある老婆もあった。自分は、死んだ祖母に手を引かれて堂に上ると彼方に、蝋燭の火が揺いでいる。其処の一段高い、天蓋の下には、赤い袈裟をかけた坊さんが立っていた。あまり、人々の念仏の声などが、鐘の音などと入り混っていて、坊さんの言っていることが分らなかった。
その坊さんは、なんだか見覚えのあるような気がしてならなかった――。
医者が来て帰った。その診察によると、もう、正一は、二たびかくれんぼうをすることが出来なかった。