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かさんかマンガンすいのゆめ
過酸化マンガン水の夢
谷崎 潤一郎
「中央公論 七十周年記念十一月特大号(第七十年第十一号)」1955(昭和30)年11月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,458 字 · 25 页
直ぐ又四人で出かける。日劇前で「君は何処か好きな所へ映畫でも見に行っておいで」とフジを捌き、三人にて小劇場指定席の一番後列のなるべく目につかぬ座席を買う。出し物は美津子の時とは既に変り構成演出並びに脚本丸尾長顕「誘惑の愉しみ」全二十景、Aqua-girl's bottom-up mambo などゝプログラムにあり。入場後十五分程にて開演となる。予等の前方の席は外人ばかりなれども満員とは行かず先ずは六七分の入りなり。日本人は全部普通席にて此の方も七八分の入り。開演後もポツポツ入場する者あり、指定席にもアメリカ人らしき男女の客入り来り予等と同じ列に席を占む。つゞいてGIが二三人パンパンを連れて予等の直ぐ前列に居並ぶ。見渡すところそのアメリカ婦人とパンパン嬢を除いては家人と珠子さん以外指定席にも普通席にも婦人客は一人もおらぬようなり。恐らく和装の中年以後の婦人の姿を二人迄も見ることは珍しき出来事なるべし。一体こゝの小劇場は日劇の頂辺までエレベーターで上り、そこから又もう一階歩いて昇らねばならない所にあって、天井の低い、屋根裏のような窮屈な小屋なので何となく息苦しい感があり、同じミュウジックホールでも大阪のOSKの方が居心地よし。