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みちづれ

道づれ

宮本 百合子

「文芸」1937(昭和12)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,491 字 · 41 页

青空文庫

「『母』なんかもよますといいな。シャポアロフの自伝の中に、労働者がゴーリキイのあの小説をどんな心持で愛読したかということが大変よくかかれているよ」

インテリゲンツィア出の同志は大抵、監獄へ訪ねて来たり、後ではシベリアへまでついて行こうと云うような婚約者をもっていた。けれども労働者の面会人はその母親だけだった。彼等は孤独だった。面会に来てくれる母親は息子と同じような感激を抱いていなかったから。『母』に描かれているような母と息子との本質的な結合が、大衆の現実の生活にあらわれて来るより前、それはそういう若い労働者にとってどのくらい待たれ希望されていたかということを、シャポアロフは含蓄をもって書いているのであった。

そこに吐露されている真情は、現在重吉の感情の深いところに横わっている或るものにふれた。忘れ難い共感と限りない惻隠の情とがあるのであった。だが、こういう娘たちに果してどこまでその感情が真実のものとしてわかり得るものなのであろう。重吉の眼の裡に翳がさした。やがてそれが消えた。三人は、入った方とは反対の方角にある公園の門から、濠端へ向った。

三