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みちづれ
道づれ
宮本 百合子
「文芸」1937(昭和12)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,491 字 · 41 页
られる。みほ子の隣りに、これも金棒によって四十がらみの勤め人風の男がいた。金棒の上へ書類鞄をもちあげている。その鞄から弁当の汁の匂いが滲み出てみほ子の顔の前にこもっている。乱暴に電車がカーブを切る度に一斉にこっちに揺られ、またあっちへ揺り返されしながら満載されて帰途についているこの人達は、それぞれどんな家へ戻って行こうとしているのだろう。みほ子はよく唱歌で云う「楽しき家路」という文句が、悲しく皮肉に思い出された。
夏なんか、夜の濃い大きい星空の下に、小さな家々が虫籠へ灯でもともしたように、裏まで見透しにつづいているのを見ると、みほ子はそこにある人間の生活というものが考えられ、一種異様な侘しさを感じるのが常であった。
幸子があんな風に泣いて飛び出したりしたのは、どうかしているけれども、それなら店の誰が互に家を知らせあって行ききしているだろう。自分の家を何か人前に出したくないような心持をもっていないものがいるだろうか。みほ子は自分にも在るその卑下した心持が苦しくくちおしくもあって、腋の下が汗ばんだ。
車庫前で降りて、だらだら坂を左へのぼった。かざり屋の裏の生垣つづきの木戸をあけて、