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どうけやく
道化役
豊島 与志雄
「中央公論」1934(昭和9)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,093 字 · 42 页
こうした気持からくる私の態度は、緒方氏に印象を残し、ひいてはその家庭での話題となったものらしい。少くとも、信子は私の家に来る時、母親から何等かの注意か依頼かを受けたもののように、私には考えられる。第一、私の母の命日だからとて花なんか持って来たのがおかしい。嫁いで間もなく先方を飛びだしてきて、二十五の今日まで家でぶらぶら日を送り、文学だの音楽だのをなまかじりしてる彼女のことだから、時々私のところへ遊びに来ることもあったが、母の仏壇へ花をもって来るなどとは、余りに殊勝すぎた。
日曜日の午後のことで、暖い春の日差を受けてる縁側で、私たちは話をした。八つ手や檜葉や躑躅などが植ってる何の風情もない狭い庭に、青い雑草があちらこちら生え出していた。女中に草を取らしたらいいじゃないの、と彼女は云った。私はただ苦笑したが、その時ふと、反対のことを考えた。庭に雑草を生えるまま茂らしたら面白いだろう。名も知れぬ小さな白や赤の花が咲いたらどうだろう。いろんな虫もとんでくるだろう……。そういう想像を私は、自然に逆らわないで生きるという形式で述べた。すると、彼女は軽蔑したように鼻の先で笑った。