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どうかんやま
道灌山
宮本 百合子
「婦人」1948(昭和23)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,015 字 · 16 页
祖父の墓は、小さい木の門がついた一区画のなかにあって、大きな槇の木の下には丸い手洗いが置かれ、高い、いかめしい墓石のぐるりにも木が植っていて、いくらか庭のようだった。
けれども、祖父の墓のとなりに、墓標だけの新墓があって、墓標の左右に立っている白張提灯がやぶれ、ほそい骨をあらわしながらぽっかり口をあけていた。四角くもり上げた土の上においてある机が傾いて、その上に白い茶わんがころがっている。太い赤い鶏頭が咲いているのも普通でなく見えた。
母が毎月演芸画報という大判の雑誌をとっていた。お化けなんかありませんよ、と母は云うけれども、その演芸画報には、お化けの芝居の写真があった。お岩だの、かさね、法界坊など、すごいお化けだった。これらのお化けは、いつもやぶけた提灯だの、墓場のそとうばと関係があり、そのそとうばは、昼間日のよくさしている養源寺の墓地にもやっぱりいっぱい古いのや新しいのが立っているのだった。
考えてみると、母はよくその頃、養源寺へお詣りに行った。子供たちの父親がロンドンに行っている留守でひまだったからというばかりが動機ではなかったと思う。母方の家は、ごたついていて龍太郎さんという母には甥に当るあとつぎを廃嫡した。