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じゃしゅうもん
邪宗門
「東京日日新聞」1918(大正7)年10~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,184 字 · 79 页
元より薄色の袿と申しましても、世間に類の多いものではございますが、もしやあれは中御門の姫君の御召し物ではございますまいか。万一そうだと致しましたら、姫君はもういつの間にか、あの沙門と御対面になったのでございましょうし、あるいはその上に摩利の教も、御帰依なすってしまわないとは限りません。こう思いますと私は、おちおち相手の申します事も、耳にはいらないくらいでございましたが、うっかりそんな素振を見せましては、またどんな恐ろしい目に遇わされないものでもございますまい。しかも摩利信乃法師の容子では、私どももただ、神仏を蔑されるのが口惜しいので、闇討をしかけたものだと思ったのでございましょう。幸い、堀川の若殿様に御仕え申している事なぞは、気のつかないように見えましたから、あの薄色の袿にも、なるべく眼をやらないようにして、河原の砂の上に坐ったまま、わざと神妙にあの沙門の申す事を聴いて居るらしく装いました。
するとそれが先方には、いかにも殊勝げに見えたのでございましょう。一通り談義めいた事を説いて聴かせますと、摩利信乃法師は顔色を和げながら、あの十文字の護符を私どもの上にさしかざして、