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しゅうぶん

醜聞

山本 周五郎

「小説新潮」新潮社、1964(昭和39)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,900 字 · 46 页

青空文庫

「明日の晩はいいが、ここはだめだ」

「頭巾をかぶっても」さくらは涎で濡れた唇を歪めた、「――たびかさなればあらわれにけりか、それがあんたたちの弱いところ、人に見られたくない瘤なんだ」

「おまえたちの宿へ届けよう、宿はどこだ」

「宿だなんて笑わせるんじゃないよ、宿屋に泊れるくらいで乞食をするかっていうんだ」

「だが寝るところはあるんだろう」

「おまえさんまたひとをばかにする気かい」さくらは突っかかるように云ったが、急にうす笑いをうかべた、「ああ、寝るとこはあるよ、のら犬だって夜になれば寝るだろうからね」

そして百軒町のある旅籠宿の名を告げた。そこはこの城下はずれにある一画で、もっとも貧しく、風儀の悪いことで知られていた。

「断わっとくけれど、へんなまねはしないほうがいいよ」とさくらは念を押すように云った、「いざとなればあたしはすぐに名のって出るからね、たとえ密通出奔の罪で罰を受けても、乞食で生きてゆくよりはましなんだ、あたしも吾平も、死ぬことなんかちっとも恐れてなんかいやあしない、けれどもあんたは違う、あんたはあたしが病気で死んだとごまかし、にせの葬式まで出した、あんた一人でやった仕事じゃあないだろう、あたしが名のって出れば、あんたのほかにもきっと幾人か、お咎めを受ける者があるにちがいない、そういうごりっぱな人たちを