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じゅうびょうしつにっし

重病室日誌

北条 民雄

「文學界」1937(昭和12)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,745 字 · 14 页

青空文庫

で、結局ぐるぐる巡つて帰つて来る。

夕方ベッドの上に坐つて空の雲を眺めてゐるうちに暗くなつてしまつた。すると、こんなことではいけない、といふ考へが不意に浮んで来る。何もかもこれではいけないといふ感じだ。憂鬱になり、夜は眠れず弱つた。

×月×日。

朝、眼をさましてぼんやりしてゐると、K君の妻君が重態だからすぐ来いと言つて来る。人の死ぬのにはもう慣れてしまつたので大してびつくりする気にもならない。それで八号病室へのこのこ出かけて行つた時には既に人がいつぱいであつた。病人がゐないのでどうしたのかと訊いてみると、今手術室へ運んだところとのことで、人々はひどく興奮して、そはそはしてゐる。よく訊いてみると、同女はかねてから咽喉を冒されてゐたが今朝になつて突然呼吸困難に陥り、附添夫が吸入器をあてがふ間もなく窒息してしまつた。しかし咽頭に穴を切開すれば或は助かるかも知れないといふのである。ところがまだ朝早くで医者が暇どつて出てこられないのださうで、窒息してからもう三十分にもなり、多分助かるまいといふ。そして人々は事情を知るとみなばたばたと手術室の方へ駈け出して行く。