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のざらし

野ざらし

豊島 与志雄

「中央公論」1923(大正12)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,100 字 · 39 页

青空文庫

「それならそうと、初めから仰言ればいいのに。」と達子は云い続けていた。「私も或はそんなことではないかと薄々感じてはいたけれど、あなたがあんまり白を切ってるものだから、ついいじめてもみたくなったのよ。ごらんなさいな、あなたは隠そうたって隠しきれるものじゃないわ。……で、どんな人なの、その女っていうのは? ねえ、すっかり云ってごらんなさいな。出来ることなら何とかしてあげますから。片山に云って悪ければ、云いはしませんから。え、一体どういう風になってるの?」

昌作は彼女の言葉をよく聞いていなかった。何だか自分自身を軽蔑したい、というだけではまだ足りない気持だった。

二人は可なり長い間黙っていた。そして昌作は突然云った。

「いずれあなたには詳しくお話をする時が岐度来るような気がします。もう四五日待って下さい。何もかもそれまでに片をつけますから。」

そして彼はぶっきら棒に立上った。まだ何か云いたそうにしている達子から無理に身をもぎ離すようにして、表へ出て行った。玄関の薄暗い所で、声を低めて云った。

「片山さんには暫く内密にしておいて下さいませんか。」

「ええ、その方がよければ云わないでおきましょう。