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ななこ
野菊の墓
伊藤 左千夫
伊藤左千夫『野菊の墓』。同一底本的分册已合并为一书。收入:奈々子、隣の嫁、春の潮。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 71,271 字 · 144 页
おとよさんの行為は女子に最も卑しむべき多情の汚行といわれても立派な弁解は無論できない。しかしよくその心事に立ち入って見れば、憐むべき同情すべきもの多きを見るのである。
おとよさんが隣に嫁入ったについては例の媒妁の虚偽に誤られた。おとよさんの里は中農以上の家であるに隣はほとんど小作人同様である。それに清六があまり怜悧でなく丹精でもない。おとよさんも来て間もなくすべての様子を知っていったん里へかえったのだが、おとよさんの父なる人は腕一本から丹精して相当な財産を作った人だけに、財産のないのをそれほどに苦にしない。働けば財産はできるものだ、いったん縁あって嫁いったものを、ただ財産がないという一か条だけで離縁はできない、そういう不人情な了簡ではならぬといわれて、おとよさんはいやいや帰ってきた。父の言うとおり財産のないだけで、清六が今少し男子らしければ、おとよさんも気をもむのではない。そういう境遇のところへ、隣のことであるから、自然省作の家と往復して、省作の人柄が、温和なうちにちゃんとしたところがあり、学問とて清六などの比ではない、そのほかおとよさんとどこか気のあったところのあるので、おとよさんはついに思いをよせる事になったのだ。