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のぎくのはか
野菊の墓
伊藤 左千夫
「ホトトギス」1906(明治39)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,539 字 · 67 页
またあの奴民子が居ないから考え込んで居やがると思われるも口惜しく、ようやく心を取直し、母の枕元へいって夜遅くまで学校の話をして聞かせた。
翌くる日は九時頃にようやく起きた。母は未だ寝ている。台所へ出て見ると外の者は皆また山へ往ったとかで、お増が一人台所片づけに残っている。僕は顔を洗ったなり飯も食わずに、背戸の畑へ出てしまった。この秋、民子と二人で茄子をとった畑が今は青々と菜がほきている。僕はしばらく立って何所を眺めるともなく、民子の俤を脳中にえがきつつ思いに沈んでいる。
「政夫さん、何をそんなに考えているの」
お増が出し抜けに後からそいって、近くへ寄ってきた。僕がよい加減なことを一言二言いうと、お増はいきなり僕の手をとって、も少しこっちへきてここへ腰を掛けなさいまアと言いつつ、藁を積んである所へ自分も腰をかけて僕にも掛けさせた。
「政夫さん……お民さんはほんとに可哀相でしたよ。うちの姉さんたらほんとに意地曲りですからネ。何という根性の悪い人だか、私もはアここのうちに居るのは厭になってしまった。昨日政夫さんが来るのは解りきって居るのに、姉さんがいろんなことを云って、一昨日お民さんを市川へ帰したんですよ。