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きんごじゅうりょう
金五十両
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1947(昭和22)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,843 字 · 23 页
髪結い賃から風呂銭まで倹約した、饅頭ひとつ買い食いもせずに二年やってみて、これでは埓があかないと焦りだしたとき、手代のひとりで清吉という者に付けられ、外廻りをすることになった。
仕事はおもに注文取りで、責任額を超えると配当が出る、古参の者に付いているうちは僅かな分前だが、そのあいだに顧客を分けて貰ったり自分で作ったりして、一定の数に達すると独立して外廻りになる仕組だった。
……清吉に付いて一年、もう独り立になってもよさそうだというとき、
「配当の分を増すから一緒にもう少しやろう」と勧められた。
条件はよかった、半年ばかりのうちにかなり纒まった金を握ったが、とたんに番頭から呼ばれて、抜商いの事実をつきつけられた、蔵出し、売掛、仕切の三帳簿を巧みにごまかしたもので、彼にはちょっと理解のつかないほど複雑なからくりになっていた。
「私はなにも知らない」
幾らこう云い張ってもいけなかった、当の清吉は大阪の出店へいって留守、帰るまで待って呉れれば自分の潔白はわかる筈だ。泣きながら頼んだが老番頭はせせら笑うだけだった。
「おもて沙汰にするだけは勘弁してやる」
と云って身ぐるみ剥ぎ――溜めた金はもちろん着たもの以外は帯ひと筋も残さず取上げて――店から逐出した。