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きんどけい
金時計
泉 鏡花
「侠黒兒」少年文學、博文館、1893(明治26)年6月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,568 字 · 12 页
父は小坪に柴門を閉じ、城市の喧塵を避けて、多日浩然の気を養う何某とかやいえる子爵なり。その児三郎年紀十七、才名同族を圧して、後来多望の麟麟児なり。
随う壮佼は南海の健児栗山大助。
「若様何でございます。」
「我が謂った通り、金時計は虚言だ。」
その声すでに怒を帯びたり。
「どうしてお解りになりました。」
「今二人で饒舌ってたろう。」
「私には解りませんが、しきりに饒舌っておりましたな。」
「うむ、解るまいと思って人の聞くのも憚からず、英語ですっかり白状した。つまり百円を餌にして皆を釣ったのだ。遺失たもないものだ、時計は現在持っている。汝も我の謂うことを肯かんで草刈をやろうものなら、やっぱり日本人の馬鹿になるのだ。」
血気勃々たる大助は、かくと聞くより扼腕して突立つ時、擦違う者あり、横合よりはたと少年に抵触る。呀という間に遁げて一間ばかり隔りぬ。
「掏摸だ!」
三郎が声と共に大助は身を躍らして、むずと曲者の頸髪執って曳僵し、微塵になれと頭上を乱打す。
「手暴くするな。」
と少年は大助を制して、更に極めて温和なる調子にて、
「おい盗ったろう。」
掏摸は陳じ得ず、低頭して罪を謝し、抜取りたる懐中物を恐る恐る捧げて踞まりつ、