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きんせんについて
金銭について
山本 周五郎
「労働文化」労働文化社、1961(昭和36)年10月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,221 字 · 11 页
……きわめて原始的な経済論なんですが、そういったものなんですから金銭それ自身には何らの意味もないので、これを以て役にたたせるか、たたせないかということは、人間の各人の暮し方、ないしは金銭に対する考え方によって決定することだと思います。金銭自身には何の意味もないと思います。
問 ――すると、近松門左衛門の『梅忠』だったと思いますが、梅川の『金が仇の世の中や』という科白ですね、金が万事を解決するとまではいかなくても、人間社会では、金があれば、相当解決できる問題もあるという意味が含まれていると思うのですが。
答 これはね、まあ、いつでも絶えず問題になっていることですけれども、これは極めて馬鹿な話で、明治初期ですか、上野で首をくくって死んだ乞食がいて、その足の下に辞世があった。五銭の金に困って俺は首をくくって死ぬのである。『死んでみりゃ、タッタ五銭とヌカすだろう、生きてるうちは百もくれまい』。――結局、金というものはそうじゃないか。生きているうちは貰いに行っても一銭もやらない。で、死んでしまうと、たった五銭で死にやがった。……
だから、金にもし固執する場合には、金銭が万事を決定する面も持っていると思う。