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きんせんについて

金銭について

山本 周五郎

「労働文化」労働文化社、1961(昭和36)年10月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,221 字 · 11 页

青空文庫

――人生借り方にまわれ――

しかし、人間生活を支えているものは金ではなくて、金は附帯的な条件にすぎない。人間、本当に生きようと思って、実際にその生きることに情熱を感じて仕事をしていれば、金というものは附帯的についてくるものです。金をもうけることを目的としている守銭奴、ないしは利殖家、そういうものは別として、普通の最大多数の人間の生活では、金は従属的なものであって、主体性はないものである。

金さえあれば何かができる、と思ったら大きな間違いで、金があったって何もできない、というのが私の考えです。

――人生借り方にまわれ――

問 先生の場合は、長いこと借家住いをしていらっしゃるということで、作家として小説一本にうちこむという生活態度をとっておられるわけなんですが、今日では、作家の中には証券投資を自分でやって、それを他人にPRしてみたりする人もあれば、永井荷風さんのように、何千万円もの預金通帳を死ぬまで買物カゴのなかに入れて歩いていた……というような例もあるわけなんですが、そういった作家の生活をどう考えておいでですか?

答 私は、借家住いはしておりますが、ものを書くという立場は、これは産業でもないし、工業でもないし事業をやっているのでもないので、人間全体、社会全体ないしはそういうものをひっくるめて、将来どうあったらいいか、というような、より広汎