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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
13 宙に浮く屍骸
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,907 字 · 32 页
元日からきょうまでを松のうち、あるいは注連の内と称したわけで、また、この朝早くそれらのかざり物を焼き捨てる。二日の書初めを燃やす。これは往古、漢土から爆竹の風が伝わって、左義長と言って代々行われた土俗が遺っているのである。おなじく十五日、貴賤小豆粥を炊くのは、平安の世のいわゆる餅粥の節供で、同時に毬杖をもって女の腰を打つしきたりも、江戸をはじめ諸国に見られた。が、この本八丁堀三丁目をちょっと横に切れた合点長屋の藤吉部屋は、親分乾児の男三人、女気抜きの世帯だから、小豆粥は粥でも、杖でたたく柳の腰は持ち合わせがない。それでも、世間なみに松かざりだけは焼いておこうと、さてこそ珍しく勘次の早起きとなったのだが――「勘弁ならねえ」の喧嘩口調で、るように取った型ばかりの門松や注連繩を、溝板を避けて露地の真ん中へ積み上げた勘次が、六尺近い身体を窮屈そうにしゃがませて、舌打ちとともに燧石の火を移そうとしていると――角の海老床、おもて通りの御小間物金座屋、あちこちで雨戸を繰る音。
小蛇の舌のような炎が群立って、白いけむりが、人のいない露地を罩める。
と、その時である。